人が死亡した時に、その人が持っていた権利や義務は別の人間に引き継がれます。
引継ぎの方法は幾つかありますが、代表的なのが「遺贈」と「相続」です。
この二つは法的に異なる制度で、一般常識として、また、身近な人が亡くなった時の対応としても知っておきたい事柄でしょう。
この記事では、「遺贈」と「相続」の違いを分かりやすく説明していきます。
「遺贈」とは?
遺言によって本人の権利や財産などを、誰かに譲り渡す制度が遺贈です。
単純な贈与と違い、本人が死亡した時に効力を発する遺言書にまとめておくのが大きな特徴。
本人が亡くなってから、遺産をどう処理すべきかを記しておくわけです。
なお、「遺贈」には二つのタイプがあります。
「相続」と同じく、権利義務の一切を引き継ぐ「包括遺贈」と、一定の分に限る「特定遺贈」です。
この二つは大きく特徴が異なるので、注意が欠かせません。
「相続」とは?
本人が死亡した時に、自動的に始まるのが「相続」の特徴となります。
特に「相続を受ける」と明言しなくても、一定条件を満たせば全ての権利・義務が引き継がれる仕組みです。
財産や権利はもちろん、義務や借金も承継するため、場合によっては遺族にとって極めて危険性の高い制度と言えます。
このため、権利を放棄したり限定的に承認したりと、色々な制度が用意されることとなりました。
「遺贈」と「相続」の違い
「遺贈」と「相続」の違いを、分かりやすく解説します。
まず、財産などを受け取れる人物の範囲の違いは、大きなポイントです。
「遺贈」は自然人でも法人でも良く、また、親戚でなくても受けることが可能。
友達に「遺贈」しても良いのです。
対して「相続」は親族の中でも、一定の条件を満たすものだけに権利が与えられます。
また、放棄の仕組みにも違いが設けられました。
「遺贈」の場合は、「特定遺贈」については自由に放棄できるようになっています。
しかし、「相続」の場合は生前に権利放棄をすることができません。
原則として、「相続」があったことを知ってから、3か月以内でないと放棄できない仕組みになっています。
後は代襲相続と呼ばれる制度の有無も、大きな差です。
「相続」では遺産を引き受ける権利を持つ相続人が、死亡や資格喪失によって権利を失っている場合、その相続人の子供などが代わりに権利を引き継ぎます。
これが代襲相続です。
「遺贈」の場合はこの制度がないため、権利を受ける受遺者が死亡しても、その子が権利を代襲することはありません。
まとめ
「遺贈」と「相続」について紹介してきました。
実際には、「包括遺贈」と「特定遺贈」、「相続」の三つで大きく内容が異なります。
具体的には不動産登記や納税義務に関して差異が生じるため、遺言をする側も、権利義務を引き継ぐ側も正確な理解が必要です。
いざ遺産分割が始まると、これらの知識なしではトラブルになりかねません。
全てを網羅的に知り尽くすのは大変ですが、「遺贈」や「相続」と言った仕組みがあり、異なる特徴がある点だけでも頭に入れておくと、いつか役に立つと思われます。