裁判や法務の勉強をしていると、ちょっとした言葉の違いが分からなくなることもあります。
少し重たい内容ですが、死刑と処刑についても同じ「刑」があるため混在してしまうこともあります。
この記事では、「死刑」と「処刑」の違いを分かりやすく説明していきます。
「死刑」とは?
殺人事件などの大きな凶悪事件が起こると、死刑をふくめた重い刑が裁判官から言い渡されることがあります。
死刑とは日本の法律でさだめられた「もっとも重い罪」のこと。
「誰かの命をうばった者は、自分の命でつぐなうもの」という概念から生まれた極刑になります。
被害者の感情を考えると、しごくまっとうな考え方です。
一方で死刑制度を採用しているのは、日本や中国などの一部の国にとどまっています。
最近ではヨーロッパなどの人権を大切にする国から「死刑廃止の訴え」が出るようになっています。
犯罪者であっても人道的な観点から、命を大切にすべきという世論が高まっているのです。
この流れをうけて、アメリカの一部の州では死刑を廃止する動きも出てきています。
「処刑」とは?
処刑というのは、悪事をおかした人に与える刑全般のことを指しています。
「処」という漢字には「さばく」や「おこなう」という意味があるので、転じて刑を執行するという意味が込められています。
日本では処刑というと、最高刑である死刑を指すことも多くなっています。
あまり聞いていて、いい印象をもたない言葉です。
すこし前までは「処刑は見せしめも兼ねて、おこなわれるもの」という概念がつよく、パフォーマンスのひとつとして、街の人たちの前で公開しながらおこなわれることも多かったようです。
多くの民衆の前で犯罪者の残忍な最期を見せつけることで「同じような犯罪に手を染めないで欲しい」という強いメッセージも込められていました。
現在は刑が執行されるときには、一部の執行官と当事者のみのクローズされた環境でおこなわれています。
「死刑」と「処刑」の違い
よく似ている言葉のため、混乱しやすいのが死刑と処刑になります。
「死刑」と「処刑」の違いを、分かりやすく解説します。
法律の勉強をしている方は、ぜひ参考にしてみてください。
・処刑の中に、死刑がふくまれている
死刑というのは最高裁などが出す、もっとも重い罪になります。
また処刑というのは、犯罪者に対する刑のことをさしています。
少し難しいのですが「処刑というカテゴリー」の中に、死刑がふくまれているというのが相応しい言い方です。
日本の法律では終身刑という概念がなく、もっとも重い罪として「死刑制度」を採用しています。
そのため処刑というと事実上、死刑をさすことが多くなっています。
ちなみに死刑制度を廃止したイギリスやドイツは終身刑を、フランスは最長で30年になる無期刑とよばれる刑を死刑の代わりにもうけています。
まとめ
死刑と処刑について、分かりやすくお伝えしました。
日本の裁判では死刑判決か迷ったときに「永山基準」とよばれる基準で判断をおこなっています。
日本の最高刑は死刑ですが、ヨーロッパなどの諸外国では加害者の人権を大切にして終身刑や無期刑をとっている国もあります。
命とは何なのか、あらためて考えるきっかけにしたいものです。